結婚式にムービーを作った話1(動機編)
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- 2022年1月6日
- 読了時間: 5分
更新日:2022年1月9日
唐突だが、最近結婚式を挙げた。
私的な、しかもリア中に満ち溢れた話を書くなど、と背中にナイフを突き立てられそうだが、物書きを趣味としている人間として、どんなことでも話のネタにしないと気が済まない質なのだ。もしよろしければ、しばらく私の与太話にお付き合い願いたい。
誰かと結婚するということは、法律上は婚姻届を役所に提出して受理されればよいわけで、本人たちの同意があれば成立する。神様の前で愛を誓うあう必要も、誰かに承認してもらう必要もないし(正確には、婚姻届の証人欄に第三者の署名をもらう必要があるのだが)、ましてや宴会を開いてご馳走を振る舞う必要もない。そういうわけで最近は、結婚式を行わない場合も増えてきているようだ。たった半日のイベントのために、自動車よりも高い金額を払うくらいなら、日々に生活に使いたいという気持ちは理解できる。
しかし、私としては、できれば結婚式と披露宴を開催したかった。理由としては私が古いタイプの人間で、儀式的な行為を重視したこと。いわゆるケジメだ。もちろん、彼女との思い出が作れる。それから、もし結婚式をしなかったら、親戚等に結婚の挨拶回りをすることになるが、結婚式に呼んでしまえば楽になる(親戚が遠いところに住んでいる場合は尚更だ)。歳を取るにつれて、こういうイベントでも発生しないかぎり、人は集まらない。結婚式という理由がなければ、次に大勢の親戚が集うことなんて、誰かの葬式くらいだ。
そういうわけで、コロナ禍が叫ばれる中、式場を予約した。呼んでも来てくれないかもしれないという不安はもちろんあった。とは言え、コロナ禍で式場を予約するメリットもないわけでもない。それは予約が取りやすかったことだ。会場によっては、式の一年以上前から予約が必要だったりするが、このご時世では式を挙げる組が少ないのだろう、休日の開催にもかかわらず5ヶ月後の日付を抑えることができた(さすがに大安ではないが)。
結婚式の日付を決めた直後は、とりあえず親戚が来てくれれば十分で、大々的に知人を呼ぶつもりはなかったが、せっかく式を(しかも結構お値段の高い会場)やるのだから、近場に住んでいる友人や会社の知り合いくらいは呼びたくなってくる。
実際声をかけてみると、丁度コロナのワクチン接種が始まる頃で、ようやく収束に向かうという楽観論が広がっていたせいか、前向きな返事を沢山もらえた。気づけば参加予定者は、当初予定の倍くらいに膨れ上がってしまった。
来てくれるのは大変嬉しいことだが、ゲストが多くなってくると、単純に食事して終わり、というわけにもいかなくなってくる。ゲストが楽しめるようなイベントを用意しなければならない。とはいえ、ブーケトスやカリフラワートスをするには新郎新婦共にゲストの平均年齢が高すぎる。新婦が「ブーケトスするよ」と声を上げても、すでに結婚しているか、あるいは結婚なんてもうこりごりだと思っている人たちが大半で、虚空に向かって投げる羽目になりかねない。
実は、結婚イベントに関して、私には切り札があった。それは、私がバイオリンを習っているということだ。その昔、家と会社の往復だけという生活で心が荒み、気分転換に通い始めたバイオリン教室も早十年が経とうとしている。時間だけならベテランだ(演奏が上手いとは言っていない)。ゲストの中にも、私がバイオリンを習っていることを知っている人は多い。披露宴で練習の成果を披露しなかったら何時すると言うのだ? 更に、新婦もギターやらドラムが趣味だったりする(そもそも楽器が共通の趣味として、お付き合いが始まった)。もしセッションを披露できれば、きっと盛り上がるに違いない。
まあ、生演奏は(しずかちゃんのバイオリンレベルでもない限り)結婚式の鉄板ネタだ。ところが問題は、私が極度のあがり症で、ただでさえ式と披露宴で超絶緊張することが約束されているのに、その上みんなの前で生演奏などしようものなら、心臓発作を起こしかねない。式中に新婦を未亡人にさせることは避けたい。さらに本音を言えば、本番当日に楽器を持っていくのは荷物になって大変だ。
すると、取れる手は事前録音しかない。
最初は、式中のBGMにさりげなく演奏曲を混ぜ込ませるのが良いだろうと考えた。ところが、さすがにそれは勿体無いのでは? と、結婚式のプランナーさんに言われてしまった。
ならば披露宴のエンディングムービーのBGMにするのはどうか? と思い至った。
披露宴のムービーには、新郎新婦の生い立ちや馴れ初めを、写真を交えて紹介するプロフィールムービーや、披露宴の最後に、超高速編集した今日の式のダイジェストを流す、エンディングムービーなどがある。しかし、結婚式のムービーを業者に頼むと、めちゃくちゃ高い。特にエンディングムービー。式のダイジェストを作成するためにカメラを回す必要があるため値段が跳ね上がる。私が結婚式を挙げた会場だと、最低でも二十万円から……。そこにお金を払うくらいなら、料理のグレードを上げた方がゲストの満足度も上がるのでは? と思ってしまうほどだ。とは言え、エンディングムービーがないと、新郎新婦が退場した後、すぐさまゲストも退場という形になって、少し寂しい気がする。
そこで、コスト削減のためにムービーの自作を検討したくなる。式のダイジェストムービーを自作することはできないが、ゲストへの感謝の言葉を伝える映像くらいなら、作るのはそう難しくはないのでは? そう思って、ネットを調べてみると、結婚式ムービーの作り方を解説した記事が山のようにあった。考えることは皆同じというわけだ。
とにかく、解説記事を読む限り、自分たちでもこれくらいなら作成できそうだ。そして、映像の中に、自分たちで演奏したBGMを加えれば、コスト削減をしつつオリジナリティも出て、みんなの前で演奏する、というミッションも完璧とはいえないが一応達成できる。なんと素晴らしい案だろう!
このアイデアを妻に話すと、まあ良いのではないか、という返事をもらえた。
しかし、これが苦難の始まりになるとは、この時は知る由もなかった。
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