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結婚式でムービーを作った話3(制作編)

 オープニングムービー作成が始まった。


 まずは絵コンテを元に、人形を使って、歩いている姿やお辞儀をしている姿など、素材を撮影する。コマ取りアニメーションだが、一秒間に三十枚使用するフルアニメーションにするには、時間的にも技術的にもとても無理で、数秒で一枚がせいぜい関の山だ。コマ取りアニメーションというよりは紙芝居である。それでも撮影は難しかった。使うのは、関節が入ったアニメーション用ではなく、ただの綿入り人形で、自立することすらできない。素人映像だと割り切って、堂々と手で持って撮影、映像にも手が入ることを許容するのが一番楽だが、一度作ると決めた以上はなるべく妥協したくない。とはいえ人形を固定するような、専門的な装置を用意する時間はない。色々試行錯誤した末、結局、割り箸やセロハンテープを使って無理矢理固定させることにした。割り箸とセロハンテープが映り込んでしまうが、そこは後工程のPhotoshopに任せることにした。


 このPhotoshop加工が便利すぎた。オブジェクト選択ツールを使えば、それほど時間をかけずに画像中から人形の部分だけを切り出すことができるし、修復ブラシツールを使えば、映り込んだ割り箸やセロハンテープもほとんど消すことができる。まさか、薄い本の表紙作成の知識とスキルがこんなところで役に立とうとは! 芸は身を助けるのだ。Photoshopの凄さに感動して、ウェルカムボードもPhotoshopの画像加工で作ってしまった。

動画素材の作成

 映像素材を作成し終えたら、後はもう動画作成アプリケーション上で並べていくだけだ。動画は初めて作ってみたが、動きのタイミングを合わせるなど面倒な部分はあったものの、素材さえ手に入れてしまえば、作るのはそこまで難しくないと感じた。

動画の作成


 ちなみに、撮影はカメラ趣味の彼女の独壇場だったが、Photoshopから映像編集という作業量が多い部分はほぼ私の役割だ……。この作業と同時に、引っ越しやら文フリの準備も同時に進んでいた。時間的にはかなりヘビーだ。


 これらの作業をMac miniで実施していたのだが、家でのんびりやっていたのでは間に合わない。作業時間確保のために、どこでも作業ができるよう、Mac Book Proに買い換えた。金額的にもかなりヘビーだ。後から冷静になって考えれば、それだけのお金があるのなら、エンディングムービーを業者に依頼できたのではないか? と思わないでもないが……。


 引越し用段ボールに取り囲まれる中、動画作成すること約一ヶ月、一通り映像の形が見えてきた。すると今度はBGMどうしよう、という話になった。「二人で合奏するのはどう?」と妻は言ったが、その案だけはNGだと突っぱねた。練習時間が取れないし、そもそも、そんなことをしてしまったら、エンディングムービーの見せ場がなくなってしまう! ……って、この時点で、全くエンディングムービーの作成に手がついていないぞ。


 そこは妻も理解してくれたようだ。代わりの方法としてフリー音源を使うのが一番現実的だと私は思ってしまうのだが、しかし、市民吹奏楽団に所属する妻は一味違った。イメージ通りの音を、時間をかけて探すくらいなら自分で演奏した方が早い、というわけで、自前の(!)トライアングルやら笛などを取り出して、独り録音を始めるのであった。


 と、こんな感じで、オープニングムービーは作れば作るほど、凝ったものが出来上がっていく。その結果、自画自賛になってしまうが、素人にしてはなかなかクオリティーの高いものができたんじゃないか、と思う。個人情報満載のため、ネットに公開できないのが残念だ。


 ところで、本来の目的であったエンディングムービーはどうなった? というと、ご想像の通り、それにかけられる時間がどんどん削られていった。特に曲を練習する時間がなくなっていく。楽譜売り場を巡って検討していたものの、結局、私が昔弾いたことがあって、伴奏もそれほど難しくないもの、という観点から、カノンになった。まあ、結婚式の定番曲の一つで、どんなシチュエーションでも合うから、よしとしよう。


 文フリで売れ残った大量の自作本に取り囲まれる中(お願い、誰か買ってください……)、突貫で、録音・撮影して、出席者への一言メッセージを込めて、さっくりとパッケージングした。オープニングムービーを作成した時間の半分もかかっていなかったのでは……? どうしてこうなった?


 途中、動画作成アプリケーションのバグに悩まされたり、動画をDVDへ焼くのが手間取ったりと、紆余曲折あったものの、こうして二つの動画は完成した。


 ちなみに、結婚式中に映像を差し込めるタイミングは、式の開始前、新郎新婦中座中、式の最後の三つがあって、中座中には、新郎新婦の生い立ちを写真を交えて紹介するプロフィールムービーを流せるのだが、それだけは、式場お抱えの映像会社に依頼した。自分たちの生い立ちを紹介したかったというよりは、映像会社に何も発注していないと、投影機材のレンタル代が別途かかってしまうからだ。しかもレンタル代がプロフィール映像作成代とほとんど変わらないという……。結婚式の料金体系、マジわからん。


 結果として、やたら映像演出の多い結婚式となったわけだ……。準備は鬼のように大変だったが、その分本番は、大きなサプライズを用意しなくて済み、落ち着いた状況で進めることができた。とは言え、新郎の最初の挨拶は緊張しすぎてうまく言葉が出せず、新婦を始めゲスト、それに式場の責任者にも心配される始末だった……。


 そして、映像の方は、直接雰囲気を見ることはできなかったが(どちらの映像も、会場の外で待機していたから……)、後から参加者の話を聞いた感じではまずまず好評だったと思う。まあ、結婚式のムービーに対して真面目にダメ出しするような人間がいたら、そんな人とは付き合いたくない……。


 以上、取り止めのない話になってしまったが、このエッセイで伝えたかったこととしては以下の三つ。一つ、結婚式で、アドリブが苦手な人は、ムービーなどの事前に作業が終わるものに力を入れるのも良いのでは、というささやかな提案。二つ目は、Photoshopは凄いぞ。そして三つ目は、私の妻はクリエイティブ(のろけ)。

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